日別アーカイブ: 2009年2月22日

幻のワールドレコード その9


 ワールドレコードのバスの可能性は、人間で例えるとよく分かるかもしれません。ギネスブックの世界一体重の重い人は560キロ(現役時の小錦の約2倍)なんだそうです。人間誰でも暴飲暴食を繰り返せば、560キロまで太ることができるわけではありません。持って生まれた体質(遺伝?)と気候風土、食事内容(カロリー等)すべての条件が奇跡的にマッチしないと、そんな非常識な体重まで太ることができません。
 そして、そんな非常識な体重を維持するのも簡単ではありません。体重が大きい人ほど、痩せるときも大きいものです。22ポンドのバスが産卵後に10%痩せただけでも、20ポンドを切ってしまうことになるのです。つまり、ワールドレコードクラスのバスでも、タイミングを間違うと、数ポンドは損をしてしまうことになるわけです。ビッグバス・トップ25ランキングのほとんどのバスが2-5月のスポーニングシーズンにキャッチされているのもそのためです。
 人間と違ってバスは厳しい自然界で生きています。そして、必ずしも生態系の食物連鎖のピラミッドの頂点にいるわけでもありません。20ポンドクラスのバスの写真を見ると、どれも不自然なぐらい異常なメタボリック体型です。普通の食生活では、そんな体にまで太ることは不可能です。高カロリーで脂肪分たっぷりのジャンクフードが大量に必要です。ただし、太れば太るほど体の動きも鈍くなってきますから、エサを獲るのが難しくなります。エサが獲れないと結局はその体重を維持することができなくなってしまいます。
 現在、カリフォルニアだけ、極端にビッグバスがキャッチされているのは、納得の訳があります。カリフォルニアのビッグバスで有名なレイクはどこも小規模なダム湖で、釣り目的で大量のニジマスが放流されます。まさに管理釣り場状態です。自然界で育ったベイトフィッシュと違ってペレットを食べて育った養殖池育ちのニジマスは動きも鈍く、脂肪分が多いので、バスにとってのまさにジャンクフードです。細長で硬いヒレがあるわけでもないので、喉をつまらせて窒息する心配もありません。
 カリフォルニアの気候は温暖ではあっても適度な冬があります。水深があるリザーバーなので、水温が下がる冬場には体内に脂肪をしっかり蓄えます。また、水温が低い期間がある方が、バスの寿命も長いと言われています。さらに、カリフォルニアのダム湖にはワニやガーなどの襲ってくる外敵がいません。太りすぎても動きが鈍くなっても安心して生きながらえることが可能なのです。つまり、アメリカではカリフォルニア以外でワールドレコードを更新するのは現実的に不可能なのです。