カテゴリー別アーカイブ: お魚ネタ

久しぶりにスポッツネタ その3


 今回のバサー中の小島宏さんの記事で紹介された”小島式孔判別法(下唇にある孔の有無)”が、またしても大きな誤解を生むきっかけになっています。この孔、日本では専門用語としてなんと呼ぶのか分かりませんが、英語ではMandibular Poresと呼ぶそうです。直訳するとまさに”下あごの孔”となります。小島さんは下唇と表記していますが、このブログでは下顎孔と表記することにします。その下顎孔については以下のような記述がありました。

 sensory pores located on the underside of the lower jaw (mandible or chin) that are part of the lateral line sensory system, the number of which is useful in identification of the Wisconsin families Esocidae, Salmonidae, and Cottidae

 要は感覚器官の一部でスポッツやスモールにだけある特別な孔ではなく、存在自体に意味がある孔のようで、様々な魚種にあるもののようです。そして、もちろんラージマウスにもあります。ブルーギルにもあるようです。この下顎孔の間隔や大きさ、数が魚種を分類する上での形態的特徴として利用されることもあるようで、パイクなどは実際に種類によって違うようです。ただ、バスの分類に関しては、この下顎孔に関して触れている文献を見たことがないのが現実です。
Fh00003455  確かにこの下顎孔は、スポッツやスモールマウスには明確にあって目立ちます。写真はもちろんスポッツです。一方ラージマウスはよく見てみないと分かりづらいです。バサーの記事では「スポッツにあって、ラージにない」と表記しているので、日本のラージマウスにわずかな下顎孔があるのを見て、「スポッツの血を引く、ハイブリッドでは?」とハイブリッド肯定派を勢いづかせるきっかけになっているようです。
 せっかく「日本にはスポッツがいない」という記事を書いてくれたのに、小島さんとしては詰めが甘かったようです。前回のブログで、この下顎孔については触れなかったのは、ボク自身も自信がなかったので、色々調べていたからでした。小島さんのホームページにはすでに訂正の記事がアップされていますが、バサー誌でも訂正の記事が掲載されることを期待しています。

久しぶりにスポッツネタ


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 ある方から「今月号のバサーに面白い記事が載っているよ」と教えてもらい、さっそく2009年2月号を購入しました。その面白い記事というのはアラバマに移り住んだコジコジこと、小島宏さんの連載記事で、今回は彼ながらのスポッツ(スポッテッドバス)に関する見解が紹介されていました。

 読んでいて、ウムウムと納得することばかりで、ボクが主張する「日本にはスポッツはいない」説を肯定する内容となっていました。「じっくり見てみないと違いがわからない」などという曖昧な差ではなく、明らかに異なっていた(引用)。まさにその通りで、いちいち判別するのに、外見の違いを探さないといけないようなものではないのです。いわば、釣り人なら当たり前に一目でブリとヒラマサ、チヌとキビレ、スズキとヒラスズキ、口太グレと尾長グレの見分けが付くのと同じで、これの違いが分からないと笑われてしまうのと同じような感覚なのです。
 ただ、一つだけボクと見解の違う点がありました。記事には一般的に文献でよく言われる第一背びれと第二背びれの間がくっきり分かれているのがラージで、繋がっているのがスポッツという表記があります。ただ、ボクは以前のブログでも紹介したように、この繋がっている、繋がっていないという表現が曖昧で、よく見ると、ラージでも繋がっているように見えたりするので、これが「日本でもスポッツ」がいる、または「日本にはスポッツとラージのハイブリッドがいる」という誤解を生む原因の一つとなっているような気がするのです。
 いずれにしても、「日本にはスポッツはいない」というのがボクの信じるところで、これまでに多くの方からメールをいただきましたが、未だに「これはスポッツかも」と思うような写真は一枚も送られて来ませんでしたし、誌面上でも目にしていません。相変わらず、いないはずのスポッツを釣り続ける方が琵琶湖に1人おられますが・・・。
 過去のスポッツネタをまとめみました。
日本にスポッツ? その1
日本にスポッツ? その2
日本にスポッツ? その3
日本にスポッツ? その4
日本にスポッツ? その5
日本にスポッツ? その6
ちょっと休憩 スポッツ豆知識
ミーンマウスバス?

デルタ名物ストライパー


 デルタには遡上、降海を繰り返すストライプトバスがいます。通称ストライパーです。昨日、ブレット・ハイトは40ポンドクラスをヒットさせて、ランディングしたそうです。ボクもそんなヤツを一度釣ってみたいです。ただし、トーナメント中はゴメンですが・・・。
 写真のようなかわいいヤツは群れに当たると入れ食いになったりしますが、メチャクチャ暴れるのでフックを外すのが怖いです。

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What is Shoal Bass? その2


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Shoalbass  ショールバスはパッと見ると、トラ模様がスモールマウスにそっくりで、写真を見ただけではスモールマウスと言われても気が付かないでしょう。実際は口はスモールマウスほどは小さくはなく、赤い目と尾びれの付け根付近の黒い大きな斑点が特徴のようです。確かに写真のショールバスを見ると、どれも尾びれの付け根あたりが黒っぽいのが分かります。ショールバスはアラバマ州・ジョージア州・フロリダ州をまたぐ限られた地域の少数の水系にしか生息しない珍しい種で、流れのある川を好むそうです。
Imgp4562  ストレーンシリーズ・サウスイーストディビジョンの初戦が行われたレイク・セミノールの支流の一つ、フリント・リバーは、そんな数少ない水系の一つで、昔からショールバスが釣れる川として有名です。ショールバスのワールドレコード、8ポンド3オンスは1977年にフリント・リバーでキャッチされているぐらいです。同じようなエリアに生息する似たような赤目のレッドアイバスやスワニーバスが2-3ポンドクラスで最大なのに比べると、ショールバスは比較的大きく育つといえるでしょう。実際、すべてショールバスのみでウェイインしてセミノール戦を制したクリント・ブラウンリーのウェイトは11匹で45ポンド4オンスですから、1匹平均約4ポンド2オンスということになり、かなりのハイアベレージだったことが分かります。機会があれば、ぜひ一度狙ってみたいですね。

What is Shoal Bass? その1


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 ジョージア州レイク・セミノールで開催されたストレーンシリーズサウスイーストディビジョン開幕戦はロコアングラーのクリント・ブラウンリーがフリントリバーのショールバスを狙う作戦で見事初優勝を飾りました。普段、聞き慣れないショールバスはFLWのサイト上で、フリントリバー・スモールマウスと表現されています。写真を見ると、確かにスモールマウスに似ていますが、ショールバスはスモールマウスでもスポッツでもない独立した種です。
 一昔前はブラックバスには6種5亜種が存在すると言われてきました。1999年10月までショールバスはレッドアイバスの亜種だと思われてきたからです。実際、古い本を見ると、そう紹介されています。しかし、その後の研究で、ショールバスはレッドアイバスとは別種であることが分かり、現在ではブラックバスは7種4亜種が存在するということになっています。もちろん、広大なアメリカ大陸の話ですし、分類学なんて種の定義・概念すら不完全でもあり、将来新しい種や亜種が発見・確認されないとも限りません。ただ、移植・放流が繰り返される現在の内水面事情では、純血の種を語ることすらナンセンスにも思えますが・・・。
 まあ、こんなこと、アメリカ人は誰も気にしていませんし、本物を見て明確に区別できる人なんて専門の学者ぐらいで、ほとんど世の中にいないと思います。まして、本物を見る機会のないボク達日本人には、ちょっとした雑学程度に知っておく程度で充分でしょう。7種4亜種のブラックバスは下記の通りです。
●ラージマウスバス
  フロリダ・ラージマウスバス
●スモールマウスバス
  ネオショー・スモールマウスバス
●スポテッドバス
  アラバマ・スポテッドバス
  ウィチタ・スポテッドバス
●グアダルーペバス
●レッドアイバス
●ショールバス
●スワニーバス

グアダルーペ・バス?


 来シーズンのFLWツアー初戦は、毎年恒例のフロリダのオキチョビーではなく、テキサス州のレイク・トラヴィスというところで開催されます。アメリカのトーナメンター達にとっても、あまり聞き覚えのない湖です。いったい、どれぐらいのポテンシャルの湖なのかも不明ですが、調べていると面白いことが分かりました。レイク・トラヴィスはラージマウス以外にグアダルーペ・バスが釣れる珍しい釣り場なのです。
 グアダルーペ・バスとは7種のブラックバスの中の1種で、ラージマウスやスモールマウス、スポッツとも違う別種です。グアダルーペ・バスはテキサス州中部のグアダルーペ川水系にしか生息しない希少種で、テキサス州の魚(テキサス・ステート・フィッシュ)にも認定されています。ネットで調べてもなかなか写真が見つかりませんが、外観はスモールマウスにかなり似ている感じです。ちなみに、あまり大きくは成長しないようで、現在のワールドレコードはレイク・トラヴィスで1983年にキャッチされた3ポンド11オンスということです。

日本にスポッツ? その5


Spobas  「その4」で紹介したスポッツとラージマウスの外観的な違い(特徴)以外に、第二背びれの付け根部分や尻びれの付け根部分にウロコがあるのがスポッツで、ラージマウスにはウロコがないという記述もよく目にします。実は今まで意識して見たことがないので、なんとも言えませんが、今度スポッツを釣ったら、確かめておこうと思います。

ミーンマウスバス?


 スポッツとスモールマウスのハイブリッド、ミーンマウスバスというバスがいるのをご存じですか? もともとミーンマウスバスというのは、ラージマウスとスモールマウスの人為的交配によって作り出したバスに名付けられたそうですが、今ではスポッツとスモールマウスのハイブリッドをそう呼ぶそうです。スポッツとスモールマウスは別種ですが、生物学的には類縁関係が近い種同士で、スポーニング期も同じなので自然交配がまれに起こりうるそうです。一方、資料によるとラージマウスはスポッツやスモールマウスとは類縁関係が遠く、自然交配は起こらない(起こりにくい)とされています。
 ミーンマウスバスは毎年FLWツアーが開催されるビーバーレイクで特によくキャッチされています。ビーバーレイクのキーパーサイズはラージマウス&スモールマウスは15インチ以上、スポッツ&ミーンマウスは12インチ以上となっています。ミーンマウスは外見はスモールマウスに近く、判別方法はいわゆるTeeth on Tongue、舌にザラザラの歯が少しでもあればミーンマウス、なければスモールマウスと判断されるらしいです。つまり、歯があるかないかでキープできるかできないか、大きな違いがあるのです。
 自然交配が起こりうる近い種同士とはいえ、本来の自然環境化では、そう簡単に異種交配が起こるものではありません。だからこそ、スポッツとスモールマウスは自然分布域が重なっていても、長い年月の中それぞれ違う進化を経て今に至っているわけです。では、なぜ最近になってミーンマウスが釣れるようになったのでしょうか? ここからはボクの推論です。本来スポッツとスモールマウスが同じ水系にいたとしても、棲み分けができたり、よりその環境に適した種の方が優占種となっていたはずです。ところがダム湖という人工的な器の中、人為的に大量に両種が定期的に放流されることで、自然交配が起こりやすい不自然に過密な環境を人間が作り出してしまったのでしょう。特にビーバーレイクはスモールマウス、スポッツともにバランスよく釣れる珍しい釣り場です。たいていの釣り場はスポッツかスモールのどちらかが多い(よく釣れる)特徴があります。そのために、特にビーバーレイクではミーンマウスが釣れるようになったのだと思います。

日本にスポッツ? その4


Basskeynegus_jpg_1   スポッツネタがけっこう評判がよかったので、さらにいろいろ調べていると、さらに面白いことが分かってきました。まず、アメリカでも釣り経験の豊富な方から、「山口県の菅野ダムでスポッツをキャッチしたことがある。あれは間違いない」という話を聞くことができました。ただし、その方は「日本では菅野ダムでしか釣ったことがない」とも言っておられました。ボク自身は菅野ダムに行ったことがないので、なんとも言えませんが、とりあえず写真を見ない限り、にわかに信じられない思いです。もし、これは怪しいぞ、という写真があれば、メールにて送ってください。特に菅野ダムのバスの写真を募集します。
 ところで、ラージマウスバスとスポッツの見分け方について調べていると、面白い資料を見つけました。これはある公的機関のサイトから見つけたものです。この見分け方の中で面白いのは、ラージマウスにもrarely has a tooth patchという記述がある点です。「まれに(舌の上の)歯がある」ということは、舌の上のザラザラの歯の有無はラージとスポッツの判別の決定打にはならないことを意味します。この記述は、ボク自身初めて見たのですが、なかなか興味深いです。
 実際、アメリカではスポッツとラージマウスを判別するには、まず口の大きさの方が重要です。もちろん、釣り人なら見た瞬間にたいてい判別できるはずですが・・・。その他、第一背びれと第二背びれの間のつなぎ目についても客観的に見て浅いか深いかなので、あまりあてにはなりません。

日本にスポッツ? その3


Spots4  もし、本当にスポッツがいるとしたら、そのルーツはどこでしょうか? 「山口県の菅野ダムにはスポッツがいる。岩国の米軍基地の人間が秘密に持ち込んで放流したらしい」というもっともらしい噂を以前からよく耳にします。事実かどうかは分かりませんが、軍人たちの余暇のために、わざわざ移植の難しいスポッツを選んで米軍が放流する必要があったのか疑問が残ります。ボク自身は菅野ダムに行ったことがありませんが、もし、スポッツが本当にアメリカから直接持ち込まれていたとしたら、菅野ダムはもっと特異にスポッツが釣れるフィールドとして注目されたはずです。何度も言いますが、スポッツという魚はラージマウスとはまったく違う魚なのです。釣り方も釣れ方も違います。
Fh000033  ボクのスポッツのイメージは「寒くなるほど活性が上がり、真冬でもスーパースプークにガンガンアタックし、ツインバズが大好きで、スピナーベイトやクランクベイトの高速引きによく反応し、1オンスのフットボールジグをフォール中に引ったくり、ベイトについた群れをドロップショットで釣れば、水面に上がってくるまでに食べたベイトを10匹以上も吐きまくる」そんなとんでもない魚です。
 「青森県の米軍三沢基地の人間が秋田の八郎潟に放流したらしい」という似たような噂も耳にしますが、ボクが八郎潟で実際に釣りをした限りでは、怪しい魚には一度も出会えずにいます。
 では、琵琶湖でスポッツが釣れるという説はどうでしょうか? 誰かがわざわざスポッツをアメリカから持ち込んで放流したとは到底思えません。「過去に日本に持ち込まれたラージマウスの中に偶然、スポッツが混じっていた」という説はどうでしょうか? 日本に持ち込まれたバスは釣り場で調達した成魚ではなく、養殖等による稚魚・幼魚を購入して用意されたバスのはずです。実際、アメリカには放流用にバスを養殖しているところはたくさんあります。管理がずさんなところで購入して、数匹スポッツが混じっていたとしても不思議ではありません。ただ、数匹のスポッツがラージマウスとの生存競争に生き残って独自に繁殖できたとは考えにくいです。
 ラージマウスといっても、環境適応能力がありますから、野池と川と琵琶湖とリザーバーでは、同じラージマウスでも違いがあります。食べているベイトの種類や量、水質や水深、平均水温、緯度や気候、高度等で、成長のスピードにも変化がありますし、性格にも違いがあります。ボクには日本でスポッツだと言われているバスのほとんどが、その違いから疑われているだけとしか思えないのですが・・・。