エリートプロの収支と現実


先日、たいへん興味深い記事を読みました。それは昨シーズンでエリートプロを引退したケヴィン・ショートがエリートプロの収支に関して、かなり詳しく書いたものです。薄々分かっていましたが、エリートプロを続けることがいかにたいへんなことであるかを、ここまで赤裸々に書いたものを初めて目にしました。
以下、彼の記事を参考にエリートプロの現実について書いてみたいと思います。
エリートプロの年間の主な経費は、エントリーフィーが最大で43,000ドルで、それ以外にモーテル等の宿泊代4,500ドル(1泊平均75ドルで60泊と計算)、トラックのガソリン代7,500ドル(1シーズン25,000マイル走行で、燃費が10マイル/ガロン、ガソリン代が平均3ドル/ガロンで計算)、ボートのガソリン代3,600ドル(40日釣りして、1日平均30ガロン消費、ガソリン代が平均3ドル/ガロンで計算)、食費1,200ドル(60日間、1日平均20ドルで計算)、フィッシングライセンス代400ドル、トラックのローン6,000ドル(500ドル/月x12回)、トラックの保険1,200ドル、ボートの保険600ドル。これらを合計すると68,000ドルになります。1ドル=115円で計算すると、782万円となります。

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この計算はあくまでベーシックな平均値を見積もったもので、プラクティス以外にプリプラをするとなると、ボートやトラックのガソリン代がさらに加算されてしまいますし、近くに帰る家がない人は、モーテルの宿泊日数は60泊では足りません。もちろん、モーテル代を浮かしてキャンパーを利用する人もいますが・・・。1日の平均の食費を20ドルとしたもの興味深いです。一日3食の食費を20ドルで抑えようと思えば、かなり質素な食生活になります。缶ビール1本飲むのもたいへんです。正直、羨ましいような華やかな生活とはかけ離れています。
もちろん、これはあくまでエリートシリーズを全戦参加するための経費であって、合間にオープン戦などを出場するとなると、その分はさらに加算されることになります。
この経費以外に忘れてはいけないのが、タックル代とボート代(ボート装備も含む)です。エリートプロともなれば、タックルメーカーのスポンサーが付くとはいえ、1シーズンにルアーやタックル類には相当のお金を費やしているはずです。実際、エリートプロが来日した際に、買い物するルアーの量のすさまじいこと・・・。公式にはスポンサーメーカーのルアー等を使用したとアナウンスしていても、実際は違うことは多々あります。大金の掛かったトーナメントでは、彼らは妥協なんかしてられません。
エリートプロはバスボートをタダで乗っていると思っている人がいますが、現実はそんなに甘くありません。毎年新艇を提供されるようなプロはトップの中のトップです。多くのプロは、ボートを割引き価格で購入し、シーズン後にそのボートを売って、それを資金に新しいボートを購入するを繰り返しています。
つまり、実際は68,000ドル以外に、さらに多くの予算がエリート参戦には必要というわけです。
今回のケヴィン・ショートの記事で最も興味深い点が、次に紹介されたエリートプロの2014シーズンと2015年シーズンの純粋な獲得賞金の年間マネーランキングトップ39位とその金額です。

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これによると昨シーズン、レギュラーのエリート戦のみで最も多くの賞金を稼いだプロの総額が385,000ドルで、2014年シーズンは365,000ドルだったそうです。これだけ見れば、日本のプロトーナメントよりもはるかに夢はありますが、注目すべきは先に述べた68,000ドル以上賞金を稼いだプロが、2015年では34人、2014年では39人しかいないということです。それ以下の選手は全米をトレールして、ハードなスケジュールをこなして、結果赤字ということになります。下位の選手に至っては数百万円単位の大赤字です。仮に2015年34位でフィニッシュした選手でも、プラスマイナスゼロですから、ギリギリやれただけにすぎません。さらに、実際の賞金は税金を引かれていますから、額面通りもらっているわけではありません。エリートシリーズのエントリーフィーは前払いですから、ギリギリの収支では翌年のエントリフィーが払えません。
エリートプロもシーズンオフでも飲み食いしなければなりませんから、その食費も家のローンや家賃も払わなければなりません。家族がいれば、養うための費用も必要です。1シーズンやりきって、お金がまったく残らない状態では、家族どころか、自分1人食っていけません。これがエリートプロの現実です。
もちろん、スポンサーから契約金をもらったり、シグネーチャーモデルのルアーのロイヤリティー収入があるエリートプロもいますが、そんなプロはやはりトップの中のトップです。それ以外はもともと大金持ちか、ビジネスで大きく成功しているか、お金を稼いでくれる奥さんがいるかでもないと、エリートプロを長年続けるのは非常に困難というわけです。
華やかで、憧れの舞台であるアメリカ最高峰のトーナメントプロも、現実はかなり厳しいですね。
http://bassblaster.bassgold.com/bidness-expenses 

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