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エリートシリーズの夢と現実


久々の更新です。2016年も残すところ、後数時間になりました。2016年の締めくくりには、ふさわしくない内容かもしれませんが、フェイスブックを通して興味深い記事を見つけたので、長文になりましたが、まとめてみました。

以前、このブログで元エリートプロのケヴィン・ショート(今年のバサーオールスタークラシックのバスキャットブースに来ていましたね)の興味深い記事を紹介させていただきました。

http://granbass-blog.teckellure.com/2016/03/24/2679

簡単に要約すると、エリートプロが1シーズンを戦うための単純な平均的最低限の経費(エントリーフィー、ガソリン代、宿泊代、食費、トラック代、保険代、フィッシングライセンス代等、ボート代とタックル&装備費は含まず)だけで68,000ドルも掛かり、2015年シーズンに賞金だけでこの経費をペイできたプロは、税金を引かれる前で上位39人、税金を引かれた後では上位12人しかいないというものです。つまり、出場選手の半数以上が、経費と賞金の収支で赤字というエリートプロの現実をリアルに紹介したこの記事は、大きな反響がありました。

華やかなアメリカのトップカテゴリーのトーナメントシーンですが、現実はかなり厳しそうです。特に下位の選手はエントリフィーすら回収できず、数百万円単位の赤字を出している計算になります。それでも毎年出場できるのはなぜか。もともとお金持ちや副業があるプロもいますが、多くはスポンサーによる金銭的援助に頼ることになります。仮に毎年出場できて、食いつなげたとしても、ポケットにお金は残りません。スポンサーを失えば、出場することができませんし、引退しても老後の蓄えはありません。正直言って、夢なんかありません。

そして、ケヴィン・ショートの続編記事がアップされました。2016年シーズンの総括として、かなり突っ込んだ内容になっています。

この記事によると、今シーズンのエリートシリーズの全選手へ支払った賞金総額(AOYやクラシック賞金を含む)は848万3500ドルで、その内訳は選手から徴収したエントリーフィーが522万4500ドルで61.58%、バスマスター側が工面した額が325万9000ドルで38.42%だったそうです。

さらに衝撃的な指摘が続きます。B.A.S.S.が今のエリートシリーズを始める前のTOP150ツアーの時代、エントリフィーは今のような高額ではなく、賞金額も今の半分ぐらいでした。2004年当時の全選手へ支払った賞金総額(AOYやクラシック賞金を含む)は507万9900ドルで、その内訳は選手から徴収したエントリーフィーが173万2500ドルで34.10%、バスマスター側が工面した額が334万7400ドルで65.89%だったそうです。

エリートシリーズが始まった2006年の場合、全選手へ支払った賞金総額(AOYやクラシック賞金を含む)は1,127万6350ドルで、その内訳は選手から徴収したエントリーフィーが583万ドルで51.70%、バスマスター側が工面した額が544万6350ドルで48.30%だったそうです。

この記事でケヴィン・ショートが指摘しているのは、エリートシリーズは賞金額が上がり、華やかで成功を収めているように見えても、現実は選手の負担割合が年々上がっているという点です。バスマスター側が支払った額は(といってもスポンサーから協賛金を集金している)2016年シーズンよりも2004年シーズンの方が多かったというのは驚きです。今シーズンで言えば、選手が獲得している賞金の約6割に当たる分が、選手たちが工面したエントリフィーを取り合っているにすぎません。

果たして、これが選手たちが本当に望んだプロフェッショナルトーナメントの姿だったんでしょうか? 極論を言えば、トップのエリートプロを支えているのは、毎年出場するだけで精一杯のその他大勢のエリートプロということになります。そして、バスマスターは確実にスポンサーの協賛金とメンバーシップの年会費で儲けているというわけです。