日別アーカイブ: 2016年8月6日

そのライフジャケットは本当にあなたの命を救ってくれますか?


最近、やたらとあちこちで目にするライフジャケットに関する啓蒙的な投稿&話題。たいへん大事なことだと思いますが、少し違和感を覚えています。それは「とにかく、(とりあえず)着用しよう」的な内容が多いからです。正直、着用していない人は論外なので、まずは着用させようと訴えるのはいいことに違いありません。着用していない人が事故にあっても、結局は釣り人全体への風当たりがきつくなるわけですから、いい迷惑でもあります。ただ、結局は命を守るために着用しているという意識より、ルールだから、他人に指摘されるのが面倒だから、という理由でとりあえず着用している人が多いのが現実だとよく感じるのです。

「そのライフジャケットは本当にあなたの命を救ってくれますか?」 真面目にそんなことを考えたことがありますか?

よく話題になるテーマに「膨張式はいざという時に本当に膨らんでくれるのか?」という疑問があります。実際、膨らまなかったという話(噂)を聞くこともあります。これは常につきまとう心配です。そこで、発泡樹脂などの固形式(浮力体式)の従来型ライフジャケットを強く推奨する人がいます。気持ちは分からないでもないです。ただ、強く推奨する人の中でも、股ひもをしていない人をよく見かけます。かなり無責任な人です。実際、釣り場で股ひもをしている人をあまり見かけません。その重要性を全く知らないのか、ただ、かっこ悪いとか煩わしいからなのか・・・。

股ひもをせずに、落水した場合、固形式ライフジャケットは上にずり上がりやすく、時には落水と同時にスポッと簡単に脱げることがあります。ボク自身、経験があります。日本では釣りをしている間(ボート上にいる間)、ずっと着用していなければなりません。一方、アメリカではボート走行中は着用の義務があっても、釣りをしている間は、急流な場所など、危険な場所でない限り着用の義務がありません。このルールの弊害で、日本の固形式ライフジャケットは、キャストなどがしやすいように、脇の部分が大きくカットしたデザインがされていたりして、さらに脱げやすくなっています。動きやすさ優先で浮力体が非常にコンパクトになっていて、その浮力自体が不安に思えるモデルもたくさんあります。特にソルト用のゲームベストのたぐいは背中にしかまともに浮力体がないものまであります。ポケットにいろいろ入れてしまえば、本当に心配です。固形式ライフジャケットを推奨する人たちはせめて、一緒に股ひも着用の重要性も強く訴えてもらいたいものです。固形式を愛用している人は、せめて一度くらい、実際にどんな風に浮くのか試しておいた方がいいと思います。

固形式の中にははじめから股ひもが付いていないものもあるようです。フロント部のベルトでしっかり固定して、ずり上がり防止を防ぐものだと思いますが、窮屈なぐらいかなりピッタリに装着しないと意味がないので、個人的には信用できないと思っています。

では、固形式と膨張式、どちらが安全なのかという最初のテーマに関してですが、膨張式を一括りにするのも危険です。手動式と自動式、首掛けサスペンダータイプ、ウェストベルトタイプ、ウェストポーチタイプなどがありますが、あくまでボク個人の見解ですが、サスペンダータイプ以外は安心できないと思っています。ウェストベルトタイプやポーチタイプを装着している人は、自分のタイプが落水時にどんな風(形)に膨らむのかを本当に理解した上で着用しているのかいつも疑問に思います。浮き輪が外に飛び出すタイプなんて論外です。

もう一つ、どこのメーカーの物かも分からない激安品の膨張式に、自分の命を預ける勇気もありません。もちろん、メーカー品がいざという時に100%絶対に膨らむと信じていいのかも疑問ではありますが、少なくとも安心感が違います。

長々と前置きを書いた訳ですが、最終的に言いたいのはこれです。「あなたは落水後に気を失うことを想定したことがありますか?」

バスボートで高速走行中に落水、水面に叩きつけられた場合、かなり高い確率で落水と同時に気を失うことが想定されます。こちらが低速で走行していても、他のボートや水上バイクに突っ込まれる可能性もゼロではありません。夏の高温で熱中症で倒れるなんてことも考えられます。手動式膨張や、膨張後に自身でたぐり寄せたり、着用する必要のあるライフジャケットは無意味です。冬、たくさん着込んだ状態でウェストベルト式が膨らみ、腰の位置などで引っ掛かった場合、重たい頭は水中に没してしまうかもしれません。

股ひもをしていない固形式タイプも落水と同時脱げるか、脱力した状態では、いずれずり上がって脱げるか、顔は水の中で呼吸が維持できないかもしれません。落水時は意識があっても、水温が15度切るような状態では、あっという間に低体温症で意識を失ってしまうそうです。

サスペンダータイプは浮力が大きくて、構造上、顔を上にして仰向けでしっかり高い位置で浮こうとするので脱力した状態でも呼吸を維持できます。落水時の衝撃で脱げることもなく、膨張後は体にしっかりフィットするので脱げる心配はありません。膨らんだ後は、視認性の高いオレンジやイエローになるので、遠くからでも発見されやすく、他のボートにひかれる可能性も低いはずです。ただ、海の場合、磯などの岩場では、波に洗われて膨張式は破れて浮力を失うことがある点も理解しておく必要があります。

固形式タイプは磯からの落水やバスボート等の事故の際、怪我を抑える緩衝材的な役割を果たすという面もあります。そう意味では、固形式も正しく使えば、安心な一つの選択肢であることは間違いありません。ただ、たまに枕や座布団、クッション代わりにいつも使って、古くペッチャンコになったライフジャケットをいつまでも使っている人を見かけることもあります。浮力体は縮んでしまえば、当初の初期浮力を維持できません。新しいものを購入することをオススメします。

ボクは泳ぎが得意でありませんし、過去に何度か落水の経験もあります。アメリカのトーナメントで死亡事故や落水事故も何度も見聞きしています。これはあくまでボク自身の見解であり、反論する人もいるかもしれませんが、少なくとも、自身が着用しているライフジャケットの構造と万一の想定を見直すきっかけになれば嬉しいです。